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2009-07-06

根頭がん腫病〔Crown gall 〕

根頭がん腫なんて怖くない!

以下、長井雄治著『バラの病気と害虫』を参考にまとめました。

【どんな病気?】
バラ切り接ぎ苗の切断部や根の切断部から病原菌が入って白っぽい瘤(胡桃の実のような)が出来てしまう。
この瘤が人間様がせっせとバラに与える栄養を吸収して肥大化し、表面が硬くなって褐色を帯びてくる。その硬くなっていく固まりが「がん腫」。クラウンと呼ばれる根冠(根頭)部にできる瘤は大きめで、根にできるのは小さめ。最近はロックウールなど水耕栽培で多く見られるとか。


【病気になったらどうなる?】
このがん腫ができたとしてもバラは枯死しない。
が、放っておくとがん腫がバラに回るべき栄養を吸収し続けるので、バラは徐々に衰弱し生育不良になる。花が小さかったり、シュートの伸びが悪かったり。根にがん腫ができた場合は根頭部にがん腫ができた場合に比べ被害は小さめか?秋花の頃葉が黄色になったら注意が必要。


【どうやって防ぐ?】
苗を購入するときによく観察する。地植/鉢植えいずれの場合も定植する際に接ぎ木部分と根の十分な観察をする。白っぽいカルス(増殖した細胞の集団)の場合もあるので区別すること。黒褐色の瘤で表面がごつごつしていたら「がん腫」。
●接ぎ木や挿し木などをするときの刃物は消毒する。剪定や断根なども消毒したはさみで作業する。刃物は煮沸消毒(数分)、火炎消毒(数秒)など。

【病原菌はどんなやつ?】
Agrobacterium tumefaciens(Smith and Townsend 1907)Conn1942
細菌の一種でグラム陰性桿菌。癌腫には病原菌が生息していて若いがん腫に多い。古い癌腫はやがて腐敗/崩壊して土壌中に拡散。病原細菌は土壌中で数年間生存し、根や接ぎ木部の傷口から侵入感染する。移植や接ぎ木などの時に出来る刃物による傷は感染の機会が大きいが、他にコガネムシの幼虫など害虫・線虫などによる被害あとから感染することも。
「傷口から侵入し、健全細胞に感染すると、病原細菌の遺伝情報を担っているDNAが正常細胞の核に取り込まれる。その結果、正常細胞は癌腫細胞に変換される。癌腫細胞は正常細胞よりも分裂速度が速い。一旦細胞が出来ると急速に分裂を繰り返し無秩序に増殖し、癌腫が作られ肥大する。形成肥大は宿主の生育状況や感染部位、環境条件により異なる。25℃前後の高温多湿の条件では感染後1-2週間で癌腫の形成が認められるが、秋の低温期に感染した場合には、潜在感染し、癌腫が形成されるのは翌年春以降となる。高温多湿の条件で発生しやすく、排水不良地の温室栽培では多発しやすい。水耕栽培も発生の恐れが大きい。接ぎ木や挿し木の作業時に刃物を消毒しないで作業を続けると感染の危険性が大きい。」

●宿主範囲:バラ、ブドウ、リンゴ、モモ、スモモ、アンズ、ウメ、カキ、イチジク、キイチゴ、サクラ、ヤナギなど


【参考までに:予防薬はあるの?】
「薬剤Agrobacterium radiobacter strain84を用いた生物農薬実用化。バクテローズ。移植時または定植時にバクテローズ20-50倍液に苗の根部を約1h浸し、根部が乾かないうちに植え付け。菌を希釈する水は塩素を含む水道水は不適切。水道水の場合は十分に煮沸して塩素をとばした後に冷却して使用する。バクテローズはすでに感染している苗には効果がないので無病の苗に使用する。病原細菌には系統による差異があり、バクテローズに抵抗性の系統が分布しているところでは効果が見られない場合がある。」


【癌腫を発見したらどうするの?】
「がん腫にかかったけど、慌てないの巻」をご覧下さいませ~。


画像は過去2年連続がん腫が見つかった『ダイアナ ザプリンセスオブウェールズ』(HT)〔K. W. Zary, 1998〕連続オペ後は見つかっていない。元気回復中でっす。
ダイアナプリンセスオブウェールズ(HT複桃)国産苗大苗6号鉢植品

4 件のコメント:

  1. そういえば以前、てんちょさんもブログの中で再発したものはないって書いてましたね。
    早期発見早期治療で克服できるのでしょうが、見つけたらきっとビビるだろうなぁ。
    我が家の古株さんたちは、幸いなことに今はその兆候はありません。

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  2. みけさん 最初はね、びびる大木だよね。「癌腫」って名前もなんだかねー。びびらせる名前だし。でも、ま、黒星と同じで、バラにつきものの病気だと思えば、気は楽よ。おでき扱いだから、私なんか。あらまたできちゃったの?って感じです。直った苗がある一方で、罹ってしまう苗が出てくるから。コガネムシ幼虫には要注意よ。

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  3. 癌しゅ特集、ありがとうございます^^
    本当にお勉強になります♪
    最初に発見した時は本当に、ガ~ン!!でしたもの。
    どなたかのブログだったか、この病気は名前に「癌」が入ってしまったから、必要以上に恐れられているってありました。あぁ本当にそうなんだろうな...と、オペ後の今は思えます。

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  4. gureさん 施術お疲れ様でした。たいしたことなかったでしょ。かおりんりんなんて、手で触ったらぽろっと取れたってさ。早期発見早期施術が一番だと思います。

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