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2009-08-24

study room-陰圧と陽圧-

薔薇の名前:『和音』(F)〔京成バラ園芸, 2004〕 
和音がポツポツと咲いていた2009年8月のある日。花弁肌上で脈が透けるように見えて美しかった。人間で言えば玉のような白い肌に血管が浮き出ている感じ?
和音【わおん】(FL淡黄) 国産苗新苗

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被子植物体内にある維管束の復習から。

・道管と師管
  道管は根が吸い上げた水の通り道〈根から上方へ〉
  師管は葉が作った栄養分の通り道〈葉から下方へ〉

・動物の血管と維管束の決定的違い
  血管は循環型・・・巡る
  維管束は柱型・・・流して運ぶ

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人間の体に張り巡らされている血管は心臓と繋がっている。心臓にある弁の働きによって新鮮な血液を体中に送り出し、もう一つの弁の働きによって体の末端で作られた炭酸ガスなどの老廃物を載せた血液が還ってくる。心臓から肺に送られた古い血液は人間の呼吸によって老廃物が酸素に替えられ、再び新鮮な血液となって体全体を巡る旅へと出る。

んじゃ植物のばやいは・・・?
植物には心臓っていうポンプに当たる器官がないよ。
どうやって植物の根は土中の水分〈「水や無機物」という言い方が正しいのだろうけどややこしくなるので、単に水と記す〉を吸い上げてるの?葉の光合成によって作られた栄養分をどうやって茎や根に行き渡らせるの?
そもそも、光合成で作られる栄養分ってどんなものだったっけ?あぁ、そう言えば、高校の生物の授業中「光化学反応」とか「カルビン回路」とかって習ったなぁ(遠い目)。光合成について調べ出すとワケワカメちゃんになるから、取りあえず光合成によって作られる物質は「ショ糖、デンプン、ブドウ糖などの有機物」ってことを「光合成の教室」Laboratory of Photosynthesis, Univ. of Tokyoで確認しておこう(このサイトは分かりやすくてお勧めです)。

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とてさ...
植物には心臓という器官がない。ポンプがないわけだ。でも水を吸い上げ栄養分を体全体に維管束を通して行きわたらせている。

【水を吸い上げる2つの力】
根が水を吸って道管を伝って茎や葉へと運ぶ時、葉の裏側に無数に存在する「気孔」が開いている必要がある。水分が気孔開放時に蒸発する「蒸散力」を利用して水を根から引っ張り上げるからだ。
それだけではないもう一つの力を「水の凝集力」という。道管の中は根から葉の気孔まで水が張りつめた状態。水で満たしたストローの上と下を指で押さえた所を想像してみる。ストローの中では水の分子が互いに引き合う力(凝集力)を使って水柱が出来てる。
植物は水分の「蒸散力」と水の「凝集力」を利用して根が吸った水を茎頂や葉先まで運び上げている。

*夏休み自由研究の一つ^^;
ストロー実験やってみた。まず、空泡を入れずにストローを満水にするのが難しかった。片方の口を指で押さえて水を流し込もうとしても内部空気圧があるから上手く満水にならない。水を満たしたコップの底にストローの片側をくっつけるようにして吸い上げ、口を離すと同時に指で押さえること数回にしてやっとストローを満たすことが出来た。ストロー下方を抑えていた指だけを離しても水は流れ落ちないが、上の指を離すと水がストローから抜けるよね。ふむふむ。ストローが植物の道管だとして根に十分な水分がなければ、水の凝集力は当然低下するんじゃない?
ついでに想像してみた、気孔が閉じている時に根の周りに水がたくさんあるところを(容器栽培の場合)。蒸散力が発揮できないし、道管の中は水で一杯だから根の周りに水分が過剰な状態。鉢底穴から水が流れ出ても土中水分はたっぷんたっぷん。そりゃあ季節によっては根腐れしたり、水分が好きな悪さをする病原菌の好適環境になってしまうって単純な図式が描けました。丸。


【栄養分を運ぶ力】
師管を通って葉の光合成で出来た栄養分を全身に運ぶには「濃度勾配」が利用される。その仕組みは以下の通り。
師管には光合成によって出来たショ糖等の有機物が運ばれて来て師管内は糖濃度が高い状態。師管を作る細胞膜はショ糖の分子を通さないが水の分子は通り抜けることが出来るため、濃度の低い師管細胞膜の外側から師管細胞内へ水が流れ込んでくる。その結果師管が膨張して管内圧が上がり中の物質が押し出されて移動するという仕組み。
*漬け物が塩辛い時に濃いめの塩水に暫く浸しておくと、漬け物から塩分が周りの塩水に流れ出て塩辛さが減るのは「濃度勾配」を利用した生活の知恵ってかぁ?


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Today's Theme〔陰圧と陽圧〕

・道管では陰圧
・師管では陽圧

道管内部圧力が外より低くなって「陰圧」が生じ水が引っ張り上げられるのに対し、師管では内圧が外より高くなって「陽圧」が生じ、水を送り出す。
これらの圧力に耐えられるように師管や道管の管は補強されている〔未来記事〕。


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参考サイト:
・Botany Web
・東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
・東京大学大学院新領域創成科学研究科生命科学研究系

6 件のコメント:

  1. 以前参考サイト「光合成の教室」を紹介してくださった時、園池公毅氏の著書『光合成とはなにか』を買ってしまいました。とても読みやすい本だけど全部読めていません(汗)
    本当は楽さんみたいに勉強したことを還元できればいいのだけれど。前から思っていたのですが、楽さんは人に説明するのがものすごく上手いですよね~
    私はくどいか省略し過ぎかのどちらかで、程良い説明ができずに相手を混乱させています(苦笑)

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  2. 楽さん。。。
    ストローを縦に満水のバケツに沈めて、頭を塞いで引き上げたら楽勝ですよ。(乱暴モノが一番に思いつく方法w)

    蒔いた種が水を得て上へと芽を伸ばしている状況が、満水面からストローの頭を塞いで引き上げている状態という感じ。
    旨く説明できてないか?

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  3. OMOやん 光合成の森は一般向け公開講座のような感じで有益ですよね。質問箱もあって、園池さんがマメに回答してくれているので便利です。葉だけでなく植物の茎も枝も光合成をしているのが確認できて良かったです。
    study noteは自分のために整理するのを第一目的としているので(^^; 自分が理解できるよう、また、納得できるようにまとめているのです。
    植物学はおもしろいですね。論理的には社会科学系分野の考え方に共通する部分が多くて、何事につけ「なるほど~」の世界が広がります。

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  4. azさん 種子は如何にして水を体内に取り入れるのでしょうか?水の凝集力を利用して吸い上げるのでしょうけど、他に別の力が働くのでしょうかね?芽を伸ばしている時にはすでに道管が形成されている?それで水柱のようなものが出来て凝集力を利用できるとか...?興味津々です。

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  5. http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/2-1.html
    お昼ご飯食べそびれ~。
    『どちて?楽』に中てられて、自習してしまいましたw

    胚は完全に乾燥しているのではないので、もとある水分量とでんぷん質と殻の繊維質でもって吸水しているのでは?


    http://www.geocities.jp/a124351514/Know/Plants/shosai.html
    1-4.根 の※維管束参照
    http://www2.tba.t-com.ne.jp/nakada/takashi/scripts/botany.html
    植物が交わす12の手紙1 参照

    発芽までのどの時点で完全な導管が出来ているのかまではわかりませんでしたが、種からちょろっと出ている時点で茎にシマシマが現れていますから、相当早い時期に導管が出来ていると思われます。

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  6. なるほど。そう言えば胚の水分量って学習しましたね(遠い目)。完璧に学習内容の記憶がぶっ飛んでます^^

    成熟した胚には子葉と胚軸、幼根の3つのパーツがあって
    、上下の先端部分には既に分裂組織が存在しているようですが、道管それ自体は種子が発芽した時点では存在しないかも。というのも、道管は前回のstudy noteでも述べたように死亡細胞で作られているからなのです。恐らくazさんの仰るとおりかなり早い段階で道管は形成されると考えられるのですが、発芽して分裂組織がある程度細胞を形成してから後の事なのでしょうね。

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