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2010-12-10

To you - behind the golden phase

Gustav Klimtグスタフ・クリムト
ウィーン生まれの美術家
金箔を用いた絢爛豪華で摩訶不思議な絵画

『接吻』
『ユディト』
『ダナエ』

などの代表作品を
どこかでなにかで目にした人も多いだろう。



「心が繋がってると思った瞬間」で紹介した
長田弘さんの詩篇『詩ふたつ』


ケース画作品の"Orchard with Roses"
1912年作品で、邦題は『バラの咲く果樹園』



言の葉のまにまに現れる20程の画は
すべてグスタフ・クリムトの作品である。
といっても、裸体女性の肖像画ではない。


55歳と半年で生涯の幕を閉じたクリムトが
ザルツブルグ近郊のアッター湖畔周辺を題材に
描いた風景画は約50作ほどあるという。


樹木や花や農園を題材にした作品が
詩篇の頁を捲るたびに生鮮に眼に飛び込んでくる

















ウィーンという都会のアトリエで
妖艶な女性の肢体を描く
官能的で甘美で絢爛たる黄金世界とは異なる作風。
自然の色彩の素晴らしさに覚える喜びとともに
クリムトの心にある静謐さが滲み出ているような
・・・・・そんな印象を受ける。



"Roses under Trees"(c.1905)
〔邦題『樹下のバラ』〕
この作品が掲載されている頁には、
長田弘さんの深遠な言の葉が三行。

ことばって、なんだと思う?
けっしてことばにできない思いが、
ここにあると指すのが、ことばだ。





ここまで深く見つめられる感性。
どこまで遠く紡ぎつづける感覚。

生まれもっての才能か。
積み重ねられる才覚か。


『詩ふたつ』あとがきには、こう記されている。
亡くなった人が後に遺してゆくのは、その人の生きられなかった時間であり、その死者の生きられなかった時間を、ここに在るじぶんがこうしていま生きているのだという、不思議にありありとした感覚。
心に近しく親しい人の死が後にのこるものの胸のうちに遺すのは、いつのときでも生の球根です。喪によって、人が発見するのは絆だからです。

1909年、47歳のクリムトが描いた『公園』
その風景の隣に言の葉が打ち付けられる。

森には、何一つ、
余分なものがない。
何一つ、むだなものがない。
人生も、おなじだ。
何一つ、余分なものがない。
むだなものがない。

何度も何度も開いては
かみしめるように読み、観る。
そして、何度も吸い込まれていく。
何度も何度も包み込まれていく。


グスタフ・クリムトは猫と暮らしていた。
クリムトと暮らしていた猫は
アッターゼー田舎家の裏庭を
歩き回ったのだろうか。
アッターゼーの澄んだ夜空に光る星を
クリムトの腕に懐かれて見上げただろうか。


To you







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