2010-06-01

Black spot:バラの黒星病考2010

黒星病black spot(黒点病とも言われたりするが、本ブログでは黒星病で統一)はバラにとって風邪のようなもの、という例え話を目にしたことがあります。「は?風邪?なんかちゃうような気がする」というのが楽趣味の第一印象でした。
黒星病の病原菌は糸状菌の一種である子嚢菌類に属す真菌で(真菌についてはココで学習したてなので記憶も新しい^^)、細かいことを言えば、黒星病はウィルス性の風邪やインフルエンザ等とは発生主因が異なりますから、その例えが妥当かどうかはちょいと疑問ではあります。それはレトリックに基づいた話だと解した上で・・・、体力のないバラは黒星病に罹病しやすい傾向がなきにしもあらず、と言えるでしょうか。病葉が落葉しやすい品種もあれば、そうでない品種もある。罹病して生育上大きなダメージを受ける苗もあれば、罹病したからと言って易々とへたばるつもりのない苗もある。バラ苗個体の生まれ持つ形質や気質・生育環境/条件によって症状も苗の往く末もさまざまでしょう。

黒星病については何度かに亘ってRosalind Infinita内で記事を書いています〔当ブログ『羅雫の森』にも複製しています:カテゴリーのキーワード:バラの病気(黒星病)〕。その病原菌は言ってみればカビ菌Fungiであり、一年中存在する常在菌で、胞子(分生子)の活動が活発化する条件が整った時に触手を伸ばしてバラ葉の細胞壁を貫通し細胞内の養分を吸い取って自らの栄養分とすることで葉にギザギザ状の紋様を生ぜしめるというものです。そして、虫や雨水などの媒介物によって自分の分身をあちこちに飛散させて生育版図を広げようとします(分生胞子による空気感染はないが、病原菌の越冬形態である子嚢胞子による空気感染はありえる)。
天から降る雨滴や水遣りの際の水滴だけでなく、熱によって温められた地表や鉢土に含まれる水分が空気の塊に含まれて上がり(こういうのも上昇気流というのかは不明)、黒星病原菌の媒介物となって下位の葉裏や枝に付着せしめるような場合もあると〔正確に何と書かれていたかはサッパリ忘れました〕何かの雑誌(確か薔薇界のソムリエと称される御仁のお笑い系^H^H可愛らしい系笑顔画像が掲載されている雑誌だったと記憶)で読みました。

偶然、直近記事study room-Coriolus effect:コリオリ効果-では地球規模での空気と物体の流れについて調べていた時の覚書を記しました。地球という太陽系惑星のごくごくわずかな地表面の更にまたごくわずかな庭の片隅にある鉢栽培のバラ苗は地球のサイズから見たらミクロの世界でしょうけれど、その微小なミクロの空間世界にも空気や物質/物体の動きと流れが認められるのかもしれないと思いました。
太陽熱の照射を受けた鉢や土から若干上方にある株下付近に掌を当ててみると「ふんわぁ~」熱をくぐもらせている空気を感じますし、微動ながら空気の動きが感じられたりします。
ん?するってぇと、鉢土という小さな世界でも「上昇した大気(空気)の膨張過程で起きる冷却」ってプロセスもありえるってこと?出来ることなら、一度で良いからテントムシの幼虫かカゲロウになってバラ苗の株元をうろついて実体験してみたいものだわ(^^;と思いました。

いつも通りのきまぐれ突然ですが、以前読んだ『バラを美しく咲かせるとっておきの栽培テクニック』という本にある黒星病についての部分を下記に引用します。
(黒星病班は)地面に近い葉から上へと病班が広がり、やがて葉は黄変して落葉する。特に梅雨どきや秋の長雨の時期には注意が必要。雨に当たると胞子が広がり急速に感染が広がる。一度かかると完全に殺菌するまでたいへん手間がかかる。早く発見して病葉を摘み取り、薬剤を撒布する。病害がなくなるまで、なか3日で3回ほど行う。軒下やベランダなど、雨の当たらないところでは黒星病は発生しないので鉢植えは軒下などで栽培するか、雨が降りそうなときには軒下へ移動させるとよい。
対策:昨年発病した株は早めに3月から防除を開始する。対病性の品種を植える。風通しを良くする。落ちた葉は拾って処分する。雨による病原菌がついた泥のはね上がりを防止するため、株元を敷きわらなどでマルチングする。〔一部太字化は楽趣味による〕

何故一部太字化したかというと、最初にこの箇所を読んだ時には、黒星病について自分で文献を読んで調べることをしていなかったこともあって、「地面に近い葉から上へと病班が広がる」という一文がどうにもこうにも理解できなかったのです。下位の葉から黒星病に罹るのであれば、上もしくは斜め上から降り注ぐ雨滴によって黒星病の分生胞子が飛散して感染を広げるというのはどう理解すればよいのか?そもそも何故下位葉から上位葉へと感染が拡大するのか、単に水滴や泥の跳ね上がりで分生子を運ぶのだとしたら、葉裏ではなく葉表に先に病班が現れやすいのは何故か、等など物理的に理解できなかったからです。単純に紙面の都合上、論理をすっ飛ばして書かれているのかも?いや、それにしても、「雨の当たらないところでは黒星病は発生しない」と書いてあるのに・・・?あれれ?確かに雨の当たらないところのバラ苗は黒星病には罹りにくいけど「発生しない」ってことは・・・
・・・ないよ(^^;

そんな単純な疑問も、上記「可愛い系笑顔の登場人物画像掲載」雑誌に書かれていた一文でやっと不可解な部分が明らかになったような気がしました。

さて、黒星病に罹ったバラの葉を早めに処分するのが望ましいと上記バラ栽培教科書にも書かれています。数年前まで(厳密に言えば一昨年まで)、楽趣味も教科書の言葉に従い羅病葉を「シャカリキになって」毟り取ったり、株下に落ちた病葉(わくらば)を掻き集めてゴミ箱へポイ!してました。それは他への感染を防ぐためだ、と書かれていたからです。
確かに病葉をそのままにしておかない方がよいのでしょう。病原菌のたっぷり詰まった鉢へ水遣りをしたら、黒星病原菌を含んだ水滴が跳ね上がったり水蒸気に含まれて(上昇気流に乗って?)舞い上がり健全な葉に付着したり他の株へ飛散したりしないとも限りませんから。

けれど・・・
去年あたりから病葉を毟り取ることは止めました。
落葉した病葉も冬の寒い時期を迎えるまでの期間、目立つ箇所は除去しますが、除去し忘れることが多くなってきています。単なる面倒くさがりっていう噂に基づき(?)実体もそうなりつつあるのかもしれません!←こんなこと書いたらazkingさんの鞭が飛んでくるかな(^^;
除去してもしなくても大して変わりは無いんじゃないかと思えてきたからってのもあります。
あ!( ̄0 ̄! 
黒星病菌が栄養とする物質がない花びらには黒星病は発生しませんよ♪ だからといって、花びらを落ちたままにしておくのはお勧めできません。何故なら「害虫」という呼び名をつけられた虫の住処やになりやすいからです。

ここで、天邪鬼の楽趣味はちょいと頭を傾げました。
野に咲くバラはどうなのだろう?
人の手の入りにくいところで、誰も病葉を除去してくれず、落葉した病葉を株元に置いたまま取り除けない環境条件下にあって、消毒薬も撒いてもらえず、栄養剤も与えられなくても、人知れず咲いている野のバラは・・・?
上記の雑誌に書いてあったと記憶しているのですが(そこまで言うなら何故立ち読みせずに買って帰ってこない?!ってお叱りはこの際棚上げして^^)、野に咲くバラは、病葉(わくらば)をも分解して栄養に変えてくれる自然の共生システムに基づいてリサイクルにのっけられていくのだってなこと〔これも正確には何とかいてあったのかサッパリ忘れました〕。ふむふむ。確かにそうよね、って本屋の店先で大きくうなずいたのでした(^^)v

楽趣味は春新芽が動き出す前から晩秋にかけての期間ニームオイル希釈液を週二回のペースで撒布しており、特に黒星病が発生しやすい時期は重曹と天然多糖類を含有する赤ニームを中心に昨年は撒布してきました。冬の間は月に数回と撒布回数は減りますけど・・・でも、結局年がら年中撒布しているかも。。。そのお陰か、赤ニーム(正式名称:「ローズニーム」)を撒布しだしてからは黒星病班葉が容易く落葉せず枝に残っている時間が長くなりました。病葉が落ちずに残っているからといって他のバラ苗に病気が酷く蔓延することもありませんでした。
黒星病原菌の活動抑止剤として昨年試した物の中に重曹希釈液があります(関連記事はコチラをどうぞ)。昨年6月~7月にかけて黒星病にかかった数苗のバラで弱アルカリ性の重曹希釈液撒布実験をしました。定点観測は出来ていませんが、黒星病班の拡大は抑え込まれた感触を得ました。その後は重曹希釈液撒布の代わりに赤ニームを入手して撒布し、今日に至る、です。赤ニームには重曹がバランス良く配合されているそうです。

庭のバラ苗について黒星病に限って前年を総括すれば、ルゴサ系のバラ苗の幾つかは罹病してほぼ素っ裸~ニヴァルになったものもありましたが(ベイシーズパープルローズはその典型苗でした)、その他の系統について殆どが黒星病とは無縁か、罹っても「軽症短期収束」という状況で、冬の落葉期まで比較的きれいな葉を残している苗が多かったように思います。

2010年5月末現在の状況は・・・
黒星病に罹りやすいと言われているバラは大半が葉っぱに黒茶色のギザギザ斑点を付けながらも緑色の部分を殆ど残したまま確りと枝についています。病班が酷くなるまで無理にとろうとしてもなかなか葉柄部分がポロリとは剥がれません。本記事に掲載している6枚目の画像はアルシデュークジョゼフ(アルシデュックジョセフ)というティーローズです。画像にも見えるように蕾が出来た頃から葉にぽつぽつと黒星病班が現れました。けれど、花が終わる時期まで黒星病班はさほど拡大もせず他の苗に拡散もしませんでした。

左画像はブルボンの『紫燕飛舞』ツーヤンフェ(ィ)ウゥ〔'Eugène E. Marlitt' 1900年 R. Geschwind作出〕です。ロサSOS!謎の葉斑点再び?で登場したクイニーアマンさんが育てていらっしゃるのと同じ品種です。その後クイニーアマンさんちの紫燕は無事に見事に開花したそうです(良かったね~♪) 
楽庭の紫燕は雨が続いたり、留守をして赤ニームが撒布できなかったりしたことで少し黒星病班が現れました。けれど、その後の赤ニームびぃ~むっ!撒布で病班の拡大は抑えられている感じです。

他にも黒星病に罹っているバラはいくつもあります。けれど、ほとんど全部と言ってよいほど病班のある葉は落葉するどころか、病班を抱えながらも緑色の部分を残したまま確りと枝にくっついています。これから葉の黄変が始まるまでは、葉緑素が残っている部分で光合成を行ってくれるのでしょう。光合成によって得られる栄養素を株に蓄えてくれるのでしょう。そして、葉は、栄養を作り出すソーラーパネルの役割を終える頃に自然と落葉していくのでしょう。
そうして自然に落ちた葉が溜まって虫の住処や隠れ家になる頃、ニーム大佐(ニーム核絞かすのこと)を虫除けとバラの栄養補給のために〔ニーム大佐についての関連記事は愛よ、愛!Ganga-Yamuna-Sarasvatiなどをどうぞ〕表土に薄く撒布する予定ですから、その時はお掃除をかねて落葉した葉を出来るだけ取り除いてやろうと考えています。

因みに、黒星病に罹った葉が最終段階で黄化するのはRosalind Infinitaの該当記事にも書いたとおり、バラが黒星病菌と闘った証です。黒星病菌が葉の内部で活動するときにバラがエチレン等の植物ホルモンを発生させて代謝活動を活発化させるからです。

黒星病と闘って黒班を残しながら黄色くなったバラの葉。
無名戦士の墓へと埋葬したく思います。

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4 件のコメント:

  1. 楽趣味さんこんばんわ。
    こちらでの書き込みは初めてです(^^;)
    読み応えのあるバラの図書館ですね。

    うどん粉病がひと段落したこともあって、最近黒星病対策を考えてました。
    九州は関東方面よりひと月くらい状況がはやく展開してるようなので、まえもって対策を考えないとと思った次第です。

    私も『バラを美しく咲かせるとっておきの栽培テクニック』を参考にしていたのですが、その後いろいろ調べてるうちに疑問が増えてしまいました。

    まだ発生していないので予防がメインになると思うのですが、ローズ&グリーンニームの交互散布は基本として、グリンニームに何を混ぜて使うか、散布回数を増やすべきか、散布時間はどうするか等考えてます。
    鉢植は軒下管理である程度回避できるでしょうけど、地植で黒星病が発生しにくい環境ってどんな環境?
    株下の風通しを良くすれば環境改善になるのか?
    とかも考えてました。

    『 Dr.真島康雄のバラの診察室』って本で黒星病を考察されていましたが、目からうろこでした。
    違う視点から実験されていたので、なるほどなと考えさせられました。

    これらを踏まえて、楽趣味さんのログはほんと凄いと思いました。

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  2. あおいくまをさん Namaste/^^

    PCの辞書が壊れてめっちゃうっとおしいです(^^;
    いっそのこと変換しなくて良い言語を使用しようかしら^^
    ・・・な~んてね。

    疑問が生じたら、自分が理解できるレヴェルで納得できないと気が済まない性質なだけです。ちょっとでも「?」があると気持ちが悪いままになっちゃうことってありませんか?

    黒星病に関しては、去年かなり眉間にしわ寄せて唸りながら記事を書きました。自分で言うのも変ですが、ちょっとそこら辺では読むことのできない記事だと自負してます(それっ位注ぎ込んで書いたってだけの話ですけど^^)。

    前回のstudy roomで取り上げた地学のことも、他のstudy noteの内容も、これまで集積してきたコンパニオンプランツや生態系のことも、それぞれが独立しているわけではないのです。私の中では全てが何がしかどこかで繋がっていることなのですよ。

    だからといって、自分のやり方を他の人に強要するつもりは全くないです。それぞれの庭環境に基づいたやり方があると思うから。けど、集合知の中には物事の底流を流れる基本中の基本(概念化できること)が存在するのではないかと思っています。
    それを元に、色んな角度からの議論が出来れば、もっと深められるのになぁ~などと妄想する日々です(^^;

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  3. 楽趣味さん、ご無沙汰しておりました。
    体調の方はいかがですか?
    理雪地方でも、やっとバラが満開を迎えつつありますよ^^

    思えば2年前、ホワイトクリスマスとミサトを新苗でお迎えし、アタックワン散布は行っていたものの、屋根つきテラスに置いていたものの、見事に黒星で素っ裸~ニバルにしてしまった私・・・結局ミサトは☆にしてしまいました-人-
    昨年からは、グリーンニーム(+月桃、アグリチンキ)を週2回散布し、アタックワンはほとんど使わなくなりました。
    黒星はまったくないとは言えませんが、やはり楽趣味さんと同じく、落葉まではいかなくなっていることを実感しています。
    バラの体力をつけていくことが大事なんだなあと思います。

    またこちらで勉強させてください。

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  4. 理雪さん Namaste/^^

    お気遣いいただきありがとうございます。
    たった今、数日ぶりに腹一杯にしてぽんぽこりん♪状態になってきましたよ~(^^)v回復基調♪

    ミサトしゃんお星様になって、きっと見守ってくれてますよ。
    黒星病って罹る時はどうやっても罹るんじゃないかな?って思います。特に新めの苗はそれぞれの庭環境が初めてだし(それまではナーセリーで薬剤散布等されてたでしょうから)、楽趣味なんて「わたしんちの子になるための通過儀礼だ~」な~んて勝手に思ってたりします(^^;
    ニームの力って、なんて言うか、厳しすぎず甘やかしすぎず、文字通り「適度」なサポートをしてくれるっていう感じかなと感じてます。
    無理に葉を毟り取っていた過去・・・バラは嫌がって抵抗していたのかもと今になって思いますよ~ん♪
    バラの体力向上委員会結成でがんがりましょ~(^0^)/

    いつでもお気軽にお立ち寄りくださいね~。

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