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忘れっぽいし、順を追って整理しおさえていかないと気が済まないタイプなので、まずは黒星病の〈感染してから広がるまで〉を復習することから。
分生子(胞子のこと)は
1発芽して(適温は18℃:発芽するには水分のある葉で9時間以上必要)
↓
2感染して(適温は19-21℃:葉に感染するには7時間以上濡れた状態が必要)
↓
3進展する(適温は24℃)
〈ポイント〉
・発芽して、感染して、進展するの順に適温が上がっている。
・発芽するのも感染するのも比較的長い時間の水分接触が必要である。
北海道などの冷涼で梅雨がないと言われる地域を除いて(2009年は蝦夷梅雨の時期があったとか?)、まさに入梅前後の時期に多発しやすいバラの病気ということですかね。秋の長雨も注意時期。
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いよいよここからが正念場(誰の?)です。グっと引き締めていきましょう。グっ!
【Stage 1 -発芽と吸管形成-】
分生子(胞子)が発芽すると管のようなものが伸びて、 葉のクチクラ層(表面を覆っているクチン層)を貫き、葉の中にある細胞cellと細胞の間で成長し始め、 菌糸が細胞壁にプチっと突き刺さって宿主となる細胞に吸管を伸ばす。
「管伸びて→クチクラ貫通→成長しー→吸口伸びる」
↓
「細胞の栄養を吸い取る」へ
この吸器でもって細胞内の栄養を吸い取り自分の栄養に換えて自分だけ成長し、バラの葉には黒紫褐色のギザギザなシミを生成させてしまうんです。まるで吸血鬼。バラの害虫でもいますよね、口吻でチュウチュウ吸って蕾にちんまい黒点と卵を残してくれちゃうチョッキリ(ゾウムシ)ってヤツ。彼奴のこともわたしゃ吸血虫って呼んでますけど。
【Stage 2 -二次菌糸形成と発病-】
栄養分を吸った翌日には、二次菌糸が形成され、 約1週間後には宿主細胞あたり5-8個の吸器が形成される。このプロセスは葉の表面のみならず、裏面の場合も同様。ただ、葉裏面の場合は、吸器が葉肉中を進展し、葉の表裏で生育する点が異なっている。症状が現れるのは、温度や宿主にもよるが、3~16日目からである。
ということは、仮に6/1に黒星胞子が発芽したとして、6/2には二次菌糸が出来て、遅くとも6/9には10個程度の吸器が出来てしまうってことで、葉面に病班という形で症状が人間の目で確認できるのは、早くて6/12、遅くて6/25って計算が出来るわけですよね(間違ってたら指摘して下さい)。
【Stage 3 -分生子層の形成と拡大-】
分生子層(胞子の生産現場)は、葉面保護層の下で、葉表面側で11日、裏面側で1カ月で形成される。このとき、相対湿度が低下して、葉面保護層が破れ、胞子が露出する。この胞子が雨水や灌水などで飛散したり、昆虫の体表に付着して拡がっていく。
左の画像は(社)農林水産技術情報協会のページで見つけたものです。黒星の病班が真っ黒な状態で葉のあちこちに点在してますね。おそらくこれは、分生子層が形成された後の状態なのだと思います。
画像左隅に葉の一部が黄変しているのが見えます。
これは、分生子(胞子)が発芽して成長を続ける活動を行って葉内の栄養分を吸い取ってくれちゃてるところのようです。それで、バラの葉に植物ホルモンの一つであるエチレンというのが溜まってしまう。このエチレン(のもつ働きについてはまた別の記事で述べることにします)というのはバラが黒星病菌の侵略を受けて自分の細胞が冒されているということを気づいた瞬間にバラ自身が生成するものなのです。防御反応みたいなものです。そうして一方では抵抗しながらも、エチレンの生成によって組織の色が変化してしまう、つまりは、バラ自身が「闘っている証拠」を見せつけている、ということなのです。これを私たちは見逃さないようにしなくてはいけません。。。
*ここら辺りのことは植物の生態生理学上非常に興味深いところですが、長くなるので植物ホルモンのことと併せてまた別の機会に。
黒星病の菌は主に分生子(胞子)という形態をとりながら、バラの葉表面に薄く存在してバラが外敵から自分自身を保護しているクチクラ層*の直下でいわば彼らの「住処建設活動」を続けるのですね。太陽光との関係で建設にかかる日数が違ってくるのでしょうかね?植物の生理学専門家に教えを請わないといけません。 その期間は、葉の表面だと二週間足らず、葉の裏側だと約1ヶ月。
*クチクラ層とは・・・以下wikipediaから
(クチンを成分とする)クチクラCuticulaは、キューティクル、角皮ともいい、表皮を構成する細胞がその外側に分泌することで生じる丈夫な膜である。様々な生物において、表面を保護する役割を果たしている。人を含む哺乳類の毛の表面にも存在する。 昆虫(特に甲虫)や節足動物の場合、クチクラは外骨格を構成し、また軟体動物の殻や卵の表面を覆う生体物質である。甲殻類ではキチン質という多糖類が主成分で蝋なども含有されている。 植物においては、表皮の外側を覆う透明な膜で蝋を主成分とする。特に乾燥地や海岸の植物の葉ではよく発達する。また、いわゆる照葉樹林というのは、それを構成する樹木の葉でクチクラ層が発達し、表面が照って見えることに由来する 。
さて、分生子層という住処を作り上げた後、黒星病菌はどうなるのでしょうか。
恐ろしいことに、湿度が低下すると、分生子層が破れて(風船が割れるような感じでしょうか)胞子が外へ噴出します。怖いですねー、許せないですねー。けれど敵も生き物。自然界の中ではある程度仕方のないことかも知れません。
そして、降り注ぐ雨粒や人間様が散水する水しぶきに乗じてあちこちに飛散したり、或いは昆虫の身体にくっついたりして、他のバラへと活動領域を広げていくのです。
前回の「黒星病との闘い2」でも少し触れましたが、黒星病の菌は土中では長期間生存できないようです(約一ヶ月)。バラの黒星病菌はバラにのみ有効で、他の植物には他の植物の黒星病菌があります。バラの黒星病菌の宿主は当然バラです。病菌は宿主であるバラ以外の物体に付着しても、長いことは生きていけません。発芽の条件が整わないからです。けれど、落葉した感染葉内では分生子層がありますから、ここで生き延びて胞子を飛散させてしまうから始末に負えないですな。温度条件がよければ越冬も可能ですから、忘れた頃に黒星の病原菌が形となって現れたりすることもあるのです。従って、用具類資材類にも今の時期から入念に注意しておかないと、翌年の黒星発生の多寡に関わってきます。
いよいよ黒星病との闘いシリーズも大詰め。
これにて力尽きました。6月末ですし^^;
最終章は次回にお預けっす。ちかりたーー。
参考文献:長井雄治『バラの病気と害虫 』(農文協)
:ヲルターラルヘル『第二版 植物生態生理学』(シュプリンガージャパン)
薔薇の名前:『ピエーゥルドゥロンサール』Pierre de Ronsard(CL)〔M.L. Meilland, 1987〕一季咲
それとは知らずに新苗で購入して、初年咲いた花に「こんなのピエールじゃない!」って勝手に駄々をこねたあのころ。。。バカだよねー。株を充実させないといけないなんて知りもしなかった。でも、今では我が家の古株のうち一番手がかからない御方として、鉢植だけど健気に花をたくさん咲かせてくれます。ごめんよー、母ちゃんホンマにアホやってん。軒なんてありませんから、雨が降ればじゃかじゃか雨水がふりかかりますが、こんなダメ母ちゃんの元でも黒星の被害は殆どないお利口さんです。ありがとね。
楽天ショップ「バラの家」『ピエールドゥロンサール』(Ant桃)国産苗新苗6号鉢植品
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