2009-08-21

study room-維管束-


薔薇の名前〔手前から順に〕『ロズマリン'89』(Min)〔Kordes, 1989〕、『グリーンアイス』(Min)〔R.S. Moore, 1971〕、『スィートチャリオット』(Min)〔R.S. Moore, 1984〕
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水辺から地上へと進出した植物が生きていくために最も効率的に且つ恣意的に体内に取り入れなければいけないのは水であろう。水辺から離れた内陸部で生きる植物が発達させたのは、自らの体内に水が流れる仕組み「維管束vascular bundle」であった。維管束を発達させた高等植物は、土壌から湿気を効率的に取り込むために背を低くしてなるだけ地表に密着するような姿勢のコケ類と異なり、背を高くして太陽光を受け光合成をも効率的に行うべく葉を高い位置に茂らすことも出来るようになっていった。現在最も繁栄している「被子植物*1」の維管束について基本を整理する。維管束の構造等についてはBotany Webサイト内のページで良くまとめられている「植物の基本構造」と「維管束系」を参照。
 *1 一般に植物とは陸上植物land plantsのことを指し〔陸上植物以外の植物は藻類と総称〕、陸上植物は「コケ植物」と「維管束植物」に大別される。更に維管束植物は「シダ植物」と「種子植物」に分けられ、種子植物は「裸子植物gymnosperms」と「被子植物spermatophytes」からなる。

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●今から1億数千年程前に地球上に「被子植物」が出現したとされる。
3億年程前に出現した「裸子植物」〔代表植物はソテツやマツ等〕は仮道管〈カドウカン〉を経由して根からの水を吸い上げるが、被子植物の維管束組織が裸子植物のそれと異なる点は「道管」の発達であった。

●茎の維管束組織と働き
維管束は水や栄養分を植物の全身に送る組織で茎だけでなく葉や根にも存在する〔その内部構造図についてはBotany web 図2. 維管束植物の内部構造*に分かりやすく図示してある〕。
*茎の維管束構造は図の通り木部と師部。木部には道管(と仮道管)が集まっている。これは茎頂〔茎の先端〕と根端〔根の先端〕との間で出来た細胞が繋がって出来たもの。同じ水の通り道である道管と仮道管だが、道管の細胞は上端と下端に大きな穴が開いて水が通りやすくなっているのに対し、仮道管細胞には穴が開いていない。また、裸子植物には仮道管はあるが道管はない。道管は被子植物がその発達の歴史で獲得した維管束の一部である。

・道管と木部
 道管は、根から運ばれる水の通り道(木部にある)

・師管(篩管)と師部
 師管は葉の光合成によって作られた栄養分の通り道(師部にある)

・形成層
木部と師部の間に存在する分裂組織で、内側へは木部組織を、外部へは師部組織を形成し続ける。木部の組織が積み重なって出来るのが年輪。

・維管束と血管の違い
血管は血液を心臓から末端へ、末端から心臓へと循環させる輪になっている。一方維管束(道管と師管)は、柱状になっていて両端は繋がっていない(水や養分が循環しない)。従って、根から吸い上げた水は葉や花に届けるために道管の中を下から上へと流れ、葉の光合成によって作られた養分は師管の中を茎や根に向かって流れる。

・師管の中を流れる物質とは・・・
養分の他に、様々な情報を伝えるタンパク質〈mDNA〉やRNA。
例えば、「花芽を形成せよ」というメッセージを茎頂に伝える物質〈フロリゲン〉が葉で形成されると、その物質は師管を通して茎頂部に運搬される。

・道管と師管、細胞の違い(詳細は後日study noteで)
 道管:死んだ細胞が繋がって出来る
 師管:生きた細胞が繋がって出来る

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ふぅ。道管と師管、被子植物にとっての二つの重要な管。植物の血管とも言えるかな。昔々生物の授業で木部と師部の図をノートに書いた記憶がちょこっとだけ蘇ってきた^^;
改めて基礎学習してみて、学生時代いかにきちんと把握してなかったかがよ~く分かった楽趣味でした。反省しきり。

グリーンアイス(Min複白緑)国産苗新苗接ぎ木苗5号鉢植品
スイートチャリオット(Min濃桃)国産苗新苗6号鉢植品

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