2009-08-18

study room-植物の体〈序〉-

小さな小さな白い花を付けていた草本。何という名前の植物だろう?今や植物学研究分野で超有名な「シロイヌナズナ」とは葉の付き方、茎の様態、花が全く異なるわね。

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動物の体を構成する器官organってたくさんある。
我々人間の体を考えてもそれは明らかでしょ?
植物にはいくつの器官がある?答えは、3つ。

 葉
 茎
 根

Q:あれれ?花は?
A:花は葉が変形した物なの。

おぉっ!そうだったの?バラの蕾を囲って花びらを守っている萼も、花びらも、花びらに囲まれて保護されている雄しべや雄しべの中にある雌しべも、全てが葉の変形した物だったのか!

Wikipediaにおいて、花は生物学的には植物の器官の一つと記述されてはいるが、以下の引用文の通り、植物学的には葉が変形した物の集合体ということとになろう。
種子植物はシダ植物から進化したものであり、その観点から見れば、雄蕊は小胞子のうをつける胞子葉、雌蕊は大胞子のうをつける胞子葉に由来する。花びら、萼も葉が起源のものと思われるので、花全体の構造は、1本の枝に、先端の方から大胞子葉、小胞子葉、不実の葉が並んだ構造が、ごく短くつまったものと見なせる。したがって、花とは、雌蕊や雄蕊を含む(ないものもある)、一個の有限の茎頂に胞子葉(花葉)と不稔の付属物がついたもののことである。

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動物には多種類の器官があって、色んな器官の組み合わせで複雑な体を構成している。一方、植物は3つの器官で謂わば単純な体を作っている。地下部においては根が細胞を繰り返し増やして行きながら張り伸び、地上部では茎と葉の繰り返しによって体を作っている。
単純な体・・・だけど、その単純さ故、植物の体内で起きている生化学反応や、外界との微生物とのやり取りや元素(栄養素)の取り込み方法について、我々人間が(植物学という学問体系で)現在認識できることは決して多くない。今回は、現在多数存在する植物学研究から基本的な知識を楽趣味なりにまとめてみた。

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Today's Theme〔分裂と分化〕

A:植物は細胞の積み重ねだ!
茎の先端と根の先端には「分裂組織」があって細胞をつくり出し、葉・茎・根を形成していく。茎の先端のことを「茎頂」という。茎頂では新しい細胞を上方向へ積み重ねることによって伸びていくのに対し、根の先端「根端」では下方向に細胞を積み重ねて地下へと伸びていく〔これを「重力屈性」という〕。

B:葉の形成
茎の先端にある分裂組織は主に茎形成のための細胞を均等に積み重ねるように作っているが、一部の分裂組織が細胞を多く作ることによってふくらみを形成し次第に増大して葉を形成する。

C:植物の細胞
細胞を積み重ねるためには細胞に「重みに耐えうる」頑丈さが必要とされる。動物と植物の細胞を比較した時、植物細胞にあって動物細胞に無いのは「葉緑体」と「細胞壁」である。「細胞壁」があるということは、それだけ単体の細胞が耐重量性をもつということだが、細胞壁を持たない動物細胞に比べれば、
 (1)物理的に変形できず、柔軟性がない
 (2)極端な衝撃に弱い
という性質を持つ。
植物細胞の大きさを単純に動物細胞と比較すると、おおよそ動物細胞の125倍の大きさを持つと考えられる。

D:植物の一生は細胞分裂の一生
生きている間細胞を作り続ける植物。樹齢1000年を超えるとされるドイツのHildesheimにあるノバラは、地上部も大きくなっている分、地下部の根も同じくらいの大きさであるはず。一般に植物の地上部と地下部の大きさはほぼ同じとされている。〔St Mary's Cathedral and St Michael's Church at Hildesheim - UNESCO World Heritage Centre(ココ)をクリック後"NHK World Heritage 100 Series"の映像を再生して下さい〕


E:軸の存在
生物には軸がある。我々人間の体で考えると、
 (1)頭頂部から足までの垂直軸
 (2)左から右への左右軸
 (3)お腹と背中をつなぐ前後軸
この3軸は動物に共通する軸
では、植物の軸は? 以下の2軸
 (1)茎頂から根端までの垂直軸
 (2)茎中心から外皮にかけての内外軸

F:分裂と分化
動物の体には3軸あることで体のパーツ(心臓とか目とかの器官)がそれぞれ「位置情報」を持っている(植物では3軸基準の位置情報は基本的に必要ない)。この位置情報に適切な形で細胞を作っていくことを動物の「細胞分化」と言う。分化によって発生し形成された器官は動物の基本的な体の構造としてその動物が死ぬまでサイズの変化はあるが、新たな器官の発生は〈基本的に〉生じない。
植物と動物の違いについて誤解を恐れずに言うとすれば、「分裂して成長する植物」と「分化した後成長する動物」といえようか。更に言えば、植物は分裂を繰り返しながら、また、分裂組織の働きを調整しながら自ら生きる環境に適した体を作っていく能力を持ち、一生それを続ける生物である。

G:生殖細胞と遺伝子
動物の場合は発生の段階で作られた生殖細胞が死ぬと元の遺伝子も死に、次世代に受け継がれることはない。一方、植物は必要に応じて生殖細胞を花の中に作る事が可能であるため、母体が生きている限り子孫繁栄は可能。場合によっては生殖細胞が生き残り母体の植物が死ぬこともあるけれど。

H:突然変異
「植物の体細胞に起きた変異は次世代に引き継がれる」・・・これは植物生殖上最大の特徴である。バラで言えば「枝変わり」現象がその良例。動物の場合は、生殖細胞に変異が起きない限り次世代に変異は引き継がれない。
*挿し木=クローンも植物の特徴:元の個体と新しい個体は同じDNAを有する。

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楽趣味の頭の中が直ぐにウニ状態になってしまうのは誰からの遺伝かしら?
今回はこの辺でノートを閉じることにしよう。

参考サイトとして挙げたBotany Webは筑波大学発信の生物関連サイトで、図も説明も極めて分かりやすい便利なサイトではあるが、残念ながら全ての項目の更新が為されていないため網羅的に植物のことを調べるには若干ながら不満が残ってしまう。けれど、今後もこのサイトは何度も開いてとくと眺める必要があるし、基本的で正確性に富んだ内容は基礎学習に十分耐えうる内容であると言えよう。Check it up now!

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参考サイト:
Botany Web
奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科

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