2010-08-13

再度!頂芽優勢 apical dominance again

本記事は文字だらけになりそな気配であることを予めお断りしておきます。書いている途中で気分が変われば画像を付け加えるかも知れませんぐぁ・・・^^
文字だけなのに・・・マシンの作動が遅い。
文字だけで作動が遅いと・・・指の動きが脳の動きと意思疎通を図れない状況が生じ、楽趣味は非常に苛つく。ここまで文字を打ち込むのに何度キーボードとディスプレイに向かって悪態を付いた事か(^^;

それは兎も角、先日something different?という記事をUpする以前からずっと頭の隅にひっかかっていた事がある。それは何かというと、頂芽優勢の仕組みとバラのシュート(正確に言うとベイサル/ベーサルシュート)発生の仕組みという2つの関係の事。

そんな折りも折り、てんちょブログの咲ちゃん記事頂芽優勢(2010/8/12)がUpされた。見ると、サイドシュート以外にもベイサルシュートと思われる新鞘が発生している。
しかも「頂芽優勢」って言葉が3回も使われているし(^^;
う~ん。ちょいと頭をガランガラン揺らしてみた。
植物学的な意味での頂芽優勢によってシュートが発生したの?

ということは・・・
上記記事で楽趣味が書いた「否」は間違ってる?
うん(^^;間違い・・・なのかな?。。。←往生際が悪い^^

ホンマに植物生理学的に見ても間違いなのだろうか?
何か引っ掛かりを感じているから「違う」と認められない。
何処か釈然としないものを感じて認められないのだ。

頂芽優勢という植物の生存戦略から発生した現象なのだろうか?
いや・・・その点については全然分かりません!

が、しかし、以前書いて途中で放り投げた頂芽優勢の記事・・・頂芽優勢apical dominanceこれをUpした時疑問に思ったことや理解不足だったことが尾を引いている事は間違いないし、何が分かっていて何が分かっていないかの線引きをしていない事も今回の楽趣味鶏頭内のモヤモヤに繋がっていると思った。

その意味では、咲ちゃんの記事は・・・
楽趣味脳にとっての休眠打破剤であるかも知れない。

バラに関しては頂芽優勢の性質が強い植物である事は確かなようだ。「村田つるすべて」にも、つるバラの成長過程において枝が倒れる事によって頂芽優勢が崩れてサイドシュートが発生し、その後ベーサルシュートが伸び始めると図説してある(p. 39)。
その仕組みはどうなっているのだろう?

しつこいようだけど、
ほんまに「頂芽優勢が崩れる」からシュートが出るのか?
それが知りたい!
シロイヌナズナの植物学じゃなくて、
バラの植物生態生理学研究者って何処かにいないのぉ~?(^^;

***
以下、ちょっとまじめに。

頂芽優勢という植物の生長戦略には、植物が作り出す植物ホルモンとその極性移動、腋芽の細胞周期と遺伝子の働きなどが関わっている。
頂芽優勢研究の歴史は100年余りだそうだ。チャールズダーウィンが記述した光屈性の研究から植物成長促進ホルモン(後にオーキシンと名付けられる)の存在を確認し植物ホルモン研究の祖と言われるティマンが、(1)オーキシンは腋芽の成長を抑制し(2)サイトカイニンが腋芽の休眠を打破することを発見したのが20世紀半ばの事だった。

上記記事をUpした時から、何故水平誘引すると芽が動きやすいのか(何となくしか分からない)、現頂芽が存在していても腋芽が動くのはどんな場合か?何がどのように作用してどう動くのか?自然の成り行きとしてどうなっているのだろう?と疑問符を掲げていた。厚焼き卵を焼く時も、玉葱を刻んでいる時も、掃除機をかけている時も、洗濯物を干す時も・・・って訳ではないけど^^

日本植物生理学会「みんなのひろば」に寄せられている頂芽優勢を検索キーワードにする質問は今のところ2つ。
登録番号1913 頂芽優勢のしくみ
登録番号2062 バラのシュート発生を促進するホルモンについて

以下、登録番号1913の問いと答え部分引用
「頂芽優性」と書かれているが「頂芽優勢」の間違いでは?
問い:
頂芽優勢のしくみとして適当な説明を次の選択肢から選べ。
(1)頂芽で合成されるオーキシンが、側芽の部分まで移動し、直接作用してその成長を抑制している。
(2)頂芽で合成されるオーキシンが、側芽の成長を抑制するサイトカイニンの合成を促進している。
(3)頂芽で合成されるオーキシンが、側芽の成長を促進するサイトカイニンの合成を抑制している。
(1)は誤りなのでしょうか?頂芽優勢のしくみについて教えてください。

回答:
頂芽優性については100年近い研究の歴史があります。オーキシンが発見され、合成される場所、移動の仕方などが明らかになったころ、頂芽を切り取った後の切り口にオーキシンを与えると腋芽の成長が抑制されるという実験結果から、ご質問の選択回答(1)が提案されたものです。1930年代のことです。遺伝子組み換え技術でオーキシン量を増やしたり、減らしたり、サイトカイニン量を増やしたり、減らしたりした植物を解析した結果、オーキシンとサイトカイニンの量的バランスが腋芽の成長を決定しているということが判ってきました。
オーキシン量が多いときやサイトカイニン量が少ないときには腋芽成長は抑制される(頂芽優性が保たれる)が、逆にオーキシン量が少ないときやサイトカイニン量が多いときには腋芽成長は促進される(頂芽優性の破れ)ことがはっきりしたのです。
頂芽を切除するとオーキシンの供給が絶たれるので、根から供給されるサイトカイニンの働きが現れて腋芽の成長がはじまる、という話になっていました。
数年ほど前から、サイトカイニン合成遺伝子の発現研究から、頂芽から供給されるオーキシンは腋芽がついている節の部分でサイトカイニン合成を抑制している、そのために腋芽の成長が抑制されている。しかし、オーキシン供給がなくなると節におけるサイトカイニン合成が開始してサイトカイニン量が増加する。その結果、腋芽の成長がはじまる、という仕組みが明らかになったものです((3)の回答)。
オーキシンやサイトカイニンの組織内での移動の仕組み、分布などが詳しく調べらたり、アブシシン酸の関与も推定されていますし、最近は腋芽成長(枝分かれ)を阻害するような物質が根から供給されていることも判ってきましたので、いま考えられている頂芽優性の仕組みも今後修整されていく可能性はあります。
上記回答から読み取れる事。
・植物ホルモン(オーキシンとサイトカイニン)の量的バランス
・頂芽優勢維持にはオーキシン多サイトカイニン少
・頂芽優勢破れにはオーキシン少サイトカイニン多
・オーキシン供給減少とサイトカイニン増加し腋芽成長
・頂芽優勢の仕組みは研究途上?

***
次に登録番号2062の質問と回答
問い:
バラを育てていて、ある程度思い通りにつるバラのシュートを発生させたいと考えるようになりました。施肥によるコントロールの他に、サイトカイニンやサイトカイニン前躯体を塗りつけたり吸わせたりして頂芽優勢をくずし、シュート発生を促すことは可能でしょうか。また、そのための薬品は入手可能でしょうか。ベンジルアミノプリン液剤をリンゴやオウトウの苗木に使用する例を読みましたが、他の植物に単純に応用できないのはなぜでしょうか。

回答:
ご質問は花卉園芸がご専門の山田邦夫先生に伺いました。
バラの花は枝の先端に咲きますので、枝の数を増せばたくさん咲く筈ですね。そこでサイトカイニンの登場になるのですが、使用法は決して易しいものではありませんの、濃度、時期、回数などをいろいろ工夫してみてください。
【山田邦夫先生の解説】
「サイトカイニンは頂芽優勢に対しオーキシンとは拮抗的な生理作用を示し、腋芽にサイトカイニンを与えると頂芽を切除しなくても腋芽の成長が促進されることが実験的に確かめられています。バラでも、サイトカイニンを外から与えると側芽の休眠が打破され成長が促進されることが知られています。具体的には、バラの地際部の芽に0.5%から1%のベンジルアデニン ラノリンペーストを塗布することによってベーサルシュートの発生が促進されるとされています。
ご質問の内容に該当する製品の一例としては、ビーエー液剤という植物成長調整剤が販売されており、リンゴ、オウトウ、ブドウ、温州ミカン、アスパラガスやキクなどに対して利用されています。農薬に該当しますので、使用できる作物、濃度や回数などには注意が必要です。植物成長調整剤に対する植物の応答は作物種により様々であり、リンゴやオウトウと全く同じ条件で使用したからと言って他の作物でも同じ結果が得られるという保証はありません。」
ほほぉ・・・
頂芽を切除しなくても腋芽の動きを促すことが可能。しかし、薬剤の使用は容易い事ではないから、ガーデンローズの栽培を趣味として楽しむ楽趣味には無縁な話だすな。この回答から楽趣味が確認したことは2つ。
よく言われている事だけど「バラは枝の先端に花を咲かせること」(これは頂芽優勢とはまた別の話でしょ?)、ゆえに、花芽をつける枝をたくさんにすれば、それだけ花数も増えるということ。
もうひとつは、サイトカイニンを腋芽に外部から与えれば頂芽の切除が無くても腋芽の休眠が打破されること。

しか~し、枝を水平に倒す事はあっても、腋芽にサイトカイニンを塗る事はな~い!から、枝を水平にする事が頂芽優勢を崩す事に結びつくとは考えられな~い!


***
突然ですが、悶々と煮詰まってきたのでチョイと気分転換。

ここで、遺伝子レヴェルでの植物学研究が盛んになるちょっと前(20世紀の終わり頃)頃までに頂芽優勢について分かっていた事を森仁志センセ(名古屋大学大学院生命農学研究科)んとこからもう一度確認し、併せて頂芽優勢apical dominance記事で中途半端にバイチャバイチャしてたこと(今のところ判明してるって意味で)を整理し直してみようと思う。参考サイトは下記にまとめてあります。

1.オーキシンは主に頂芽で作られ、葉でも作られる
2.オーキシンは茎の中を下に向かって移動する(極性移動)
3.オーキシンの極性移動は重力屈性とは関係ない
4.頂芽で作られたオーキシンは休眠中の腋芽には移動しない
5.頂芽切除後腋芽にオーキシンを与えても休眠は維持されない
6.頂芽切除後切り口にオーキシンを与えると休眠が維持される
7.サイトカイニンは通常根で作られる
8.サイトカイニンは茎の中を上に向かって移動する
9.サイトカイニンは頂芽が切られると茎で作られる

オーキシンの極性移動は重力と関係がなく、何ちゃら言うタンパク質が輸送体として機能しているらしいです。で、森センセによると、茎の上下を逆さまにしてもオーキシンは根に向かって移動する。ということは、枝を垂直にしようが水平にしようがオーキシンの移動目的地はただひと~つ!「根方面」。これが極性移動と言われる所以なのですね。
ということは、頂芽が存在する間はオーキシンも作られちゃ~輸送され、作られちゃ~輸送されを繰り返しているわけで、枝を水平に倒したところでオーキシンの量がそれほど減少する事とは関係ないような・・・。頂芽が無くならない限り、サイトカイニンがいくら頑張って茎を上へ上へと移動してきても腋芽の休眠打破作用は発揮出来ないわけでしょ?だって「腋芽の休眠打破に必要なサイトカイニンという植物ホルモンの合成を抑制している」というのが、オーキシンの働きなんだもん。

では、何故頂芽が切られたり無くなったりしていないのに腋芽が休眠を解かれることがあるのだろうか?JSSPみんなのひろば登録番号1671に、これとよく似た質問がある。以下回答の一部を引用。
アサガオの腋芽に似たような現象が見られます。アサガオの先端を下に向けると、山になった最も高い葉腋の腋芽が伸びてきます。頂芽があるにもかかわらずです。ちょうどアサガオが咲いている時期ですから試して見て下さい。この場合、頂芽からオーキシンが流れてこなくなったかと言えばそうではありません。最近、東北大学の高橋先生のグループの研究により、この時には サイトカイニンの量が増加していないことが確かめられています。アサガオも頂芽を切除するとオーキシンが流れてこなくなり、茎でサイトカイニンが合成され、その結果、休眠していた腋芽が成長を開始します。しかし、茎(つる)を曲げた場合は、別の仕組みで腋芽の休眠が解除されるようです。 
植物はいろいろな緊急事態に備えていろいろな仕組みを持っているようです。


うわぁ~~ん!
この、っこのっこのっ「別の仕組み」が知りた~~い!
まさに、シュートを倒すと新鞘が発生するってことジャン!
しかも、サイトカイニン抑制剤のオーキシン量も減らず、休眠打破剤サイトカイニンが増加していないって..。一体朝顔の蔓の中で何が起きているの?それはバラの枝を倒した時にも起きる事と同様の事なの?

東北大学の高橋センセって・・・
重力屈性の研究もしてる高橋秀幸さんのことかな?

ん?「緊急事態」ですと?
枝を倒す事が植物にとっての緊急事態に相当する事なのか。
枝を倒した場合に生じる植物にとっての弊害って何?
だから、頂芽を切らなくても腋芽の休眠が解かれる訳でしょ?
枝を倒した時に何をどう感じて次なる戦略に打って出るのか?
う~~みゅ、謎は深まるばかりです。
しか~~し、植物って凄い!とまたまた再認識です^^

今回はこれまで!
次なる楽趣味の戯言に続く・・・でしゅ~っぽん!
                   ↑
                気が抜けた音


※参考サイトは上記記事に掲載したページと
・オーキシン(Wikipedia)
・サイトカイニン(Wikipedia)
・細胞機能と植物ホルモン
・JSSPみんなのひろば登録番号1671
などなど。

8 件のコメント:

  1. うみゅ~ (-_-;)

    どこからか叫び声が聞こえてきそうですねぇ。

    「難しいのきら~い!!」

    今回ばかりは一緒に叫ばせていただきましょう。

    湘南地方より愛をこめて・・・

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  2. みけさん お難しいのはお嫌いですか?(^^)

    疑問が解けたとしても、「だけんなん?(だから何?)」って話ですけどね、んでも、やっぱ知りたいっす^^

    起こさないオーキシンと起こすサイトカイニンの作用以外に何かが働いているのか、何なのか。
    両者のホルモンバランスという単純な図式なのかどうなのか?

    いや、知ってどうなるものでもないんっすけどね(^^;;

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  3. 一度引っかかったら、疑問が解けるまですっきりしないというのはと、と~ってもよくわかりますよ^^

    でもねぇ・・最近年のせいか気力と根気が続きませんのよ・・・

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  4. あはは(^0^)奥様、何を仰いますやら^^

    >最近年のせいか
    いやいやいやいや、若いっしょ^^
    まだまだ人生半分も行ってないでがしょ?

    自然って不必要な物は作らないでしょ?
    最低限の必要性でもって植物も生きていて、折り曲げ剪定で芽が出てくる機構には他の部分で使われている物が形や機能を変えて役目を果たしているのかもしれない(その可能性が高いと楽は思うです)、って考えると、植物体の中に宇宙を見るような錯覚に陥るです(^^;ナンノコッチャ?

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  5. てんちょ2010/08/14 16:45

    あんまり難しく考えないほうがいいよ~ん^^


    だって研究で分かってることなんて、
    植物からすれば、ほんの一因程度だもの(笑)

    研究に書いてあることが、実地で向き合っていると、
    必ずしも当てはまらないものありますよ~



    そして…

    バラの頂芽優勢は「絶対的な頂芽優勢」ではなく、
    比較的おおらかな頂芽優勢

    「ゆる~い頂芽優勢」です!
    じゃないとベーサルシュートでないしね~(笑)

    >「バラは枝の先端に花を咲かせること」
    は「ゆる~い頂芽優勢」の結果だよ~ん


    だから枝を折り曲げ、株元を株の中で高い位置にすると、
    「ゆる~い頂芽優勢」が働き、

    比較的高い位置の芽が動くということ!


    ちなみにサイトカイニンの塗りこみは、

    出ないことも多いし、
    無理やり動かすので、良い芽は出ずらいです^^;


    という事で、それだけでなく多くの、
    さまざまな条件を整うことによって

    シュートは動き、「ゆる~い頂芽優勢」
    がバラの生育におおからな規則性を
    もたらしてるということです^^


    てんちょ

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  6. おおおおっ!お盆の中日に「バラの家大学」てんちょ御自らのすっちょ~特別講義だぁ~!ありがとうございます♪
    バラは比較的大らかな「ゆるキャラ」な頂芽優勢・・・なるなるほどほど。

    >だから枝を折り曲げ、株元を株の中で高い位置にすると、「ゆる~い頂芽優勢」が働き、比較的高い位置の芽が動くということ!

    納豆かき混ぜた、これから反芻して食うっす(^^)

    サイトカイニンを塗り込んでも良い芽が出づらいというのは、バラがそれを本当は望んでいないのかも知れませんね。
    必然性のないことはしない、のかも(^^;

    バラの大らかな頂芽優勢というのは、長い年月をかけてバラが身につけてきた大らかさが備わっているのかも知れないなぁ、と思いました。
    バラ育てに向き合う時にも、その大らかさにも似たスタンスが取れればよいなぁ~とも思いました。

    よい勉強になりました~!!\(^0^)/
    これからも出来の悪い生徒をよろしく~です^^

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  7. なるほど~>てんちょさん

    「ゆる~い」頂芽優勢なのですね。とってもわかりやすい。
    それに無理をさせればよい芽は出ない。
    当たり前といえば当たり前なのに
    理屈で書かれると何かとってもすごいことのように感じてしまいますねぇ。
    なんかみょ~に、スルっと納得できたなぁ。

    お休みのところお出まし感謝です。

    ってこんなところですんません>楽さん

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  8. 絶対的な頂芽優勢ではなく、ゆる~い頂芽優勢ってのがミソですね。
    その「ゆる~い」タイプの特性を持つバラ時間に付き合って行くって、これほど贅沢なことはないかも知れませんね。

    尤も、「数年私と付き合ったからと言って、分かったような顔をするんじゃないわよっ」ってバラに言われそうですけど(笑)

    あぁ・・・何だか今日はスッキリした気分っす♪
    ありがと>てんちょ♪

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