2011-02-15

Series HUMUS 5 「団粒土壌が良い訳」

一つ文章を読んで分かったつもりでいても、ちっとも理解できていないことに気づかされる。同じテーマで書かれた他の文章を読んで、「あぁ、アレはそういうことだったのか!」と少し分かったような気になる。そのようにしてアガキながら少しずつ自分なりに進めていこう。

本稿で参考文献にあげた『土とは何だろうか?』の第2章初っぱなに、70~80年代にかけて行われた大規模に造成された農地(事例は西日本のミカン栽培)で生育不良が起きた話が出てくる。

生育不良の原因は、土。



造成当初レイキドーザーでゆるめられた土が数年後には堅く締まって水はけが悪く、空気の通りも悪い状態だったという。ミカンが枯死したところに梅の苗を植えたところ、植えたときの大きさのまま枯れてしまったとか。掘り起こしてみると、「植え穴には壺でも埋めたかのように水がたまっており、梅の苗はまったく新しい根を伸ばすことなく死んでいたのである」〔引用、同書11頁〕。

問題は、土の中の隙間(孔隙)。
件の造成地植え付け当初は、土中に孔隙が十分で適当な存在していたから、余分な水も下方へ逃れたし、水の流れに伴って空気が入ってくるから根もよく伸びた。
雨にたたかれるなどして、次第にばらけた土の粒子が孔隙を埋め、時とともに排水性は低下し空気の通りも悪くなる。
「普通の畑の土は簡単にバラケないのに、造成地の土はこうもたやすくバラケてしまうのだろうか?ここで、バラケるといっているのは、コロイド化学で分散と呼んでいる現象であって、土の場合には粒の細かい粘土分の示す挙動である。粘土の粒子が一つずつばらばらになって水の中に浮遊し、なかなか沈まない時に、粘土は分散状態にあるという。もし、粘土の粒子が何かの理由でくっつきあって(凝集して)いれば、見かけの粒子は大きくなって比較的早く沈降し、分散状態にはならない」〔同書13頁〕

ことほどさように、
土の単粒構造は根をダメにする、
といったところだろうか。



粘土の粒子をつなげてくれるもの・・・それは、有機物と土壌生物。
有機物は、土壌動物の餌となり、土壌動物の生の証である排泄物が土中微生物によって分解される過程でさまざまな有機化合物へと生産されていくことはSeries HUMUS「黒いもの、腐植」-3-で不得手ながらにも確認した。
そう。粘土の粒子が単にミクロな世界の粒子ではなく、土壌という「植物を支える能力を有するもの」になるに必要なツナギのものだ。

腐植を土壌生物が分解したり加工したりする過程で作られる団粒(
土の団粒構造って?)の大きい物はミミズの糞塊とか。楽庭でも時々芝生地面部分でもみかけるミミズの糞塊、ツブツブホッコホコとしている。
「団粒はすべて容易に分散しないという点が大切である」
確かに、ミミズの糞塊は潰して粉々にしようとしてもなかなか崩れない。細粒の塊で団粒が出来ている土塊(大小さまざま)は崩れにくかった。

Series HUMUS 「粘土(鉱物)」 -2-でメモ書きしたように、土壌(久馬によれば「自然の土も人の耕す土もすべての土をひっくるめると土壌という」という中国の古文献を引いた上で、「生命を育む土を、あえて土地や素材としての土から区別する」場合には「土壌」とする。漢字文化圏では植物生育の培地としての土に関する学問は土壌学。)の構成は、固相(無機物と有機物)、液相、気相からなる。このうち液相と気相の2相が孔隙を為す。
曰く、
石の上には水がなく、水の中には空気がないからである。土壌が植物をうまく育てることができるのは、水と空気の両方を、自らを構成するものとして持っているからにほかならない。

三相組成の事例として、
・東京都田無火山灰土壌
・千葉県九十九里浜砂丘土壌
・長野県元農業試験場沖積土壌
・愛知県高師原洪積土壌
が挙げられている。
この中で、田無の土壌は黒ボクと呼ばれる土壌で、固相割合が小さく、孔隙率が非常に高い分、重量が小さく風によって飛散しやすいらしい。



ある土壌がどのような状態にあるのかについては、三相組成だけでなく、一定容積で乾燥土壌の容積(容積重soil bulk density)を測る方法もある。これによって、容積重によって固相の割合と孔隙率が分かる(そうな^^詳細は下記農林省のサイト参照)。しかしながら、土壌によって容積重や孔隙率が異なるのは、有機物含量の違いとともに、一定容積における土の粒子の充填度合が異なるからでもある。

土壌粒子の立体的な配列のことを単粒構造という

一定の容積に土粒子がどのような配列で充填されるか(粗に充填されるか、密に充填されるか)によって、単位容積あたりの孔隙率が異なってくる。粗に充填されても、大きめ粒子と粒子の孔隙に小さな粒子が入り込めば、所謂すし詰め状態になって孔隙率は小さくなる〔久馬 p.19~20によれば、土の粒子直径が等しい球であると仮定した単粒モデルで、土の粒子が最も密に充填された場合の孔隙率は25.95%〕

団粒:土壌粒子が相互に連結され立体的配列により集合体を為す。
いま、仮に団粒の個々の基本粒子(一次粒子)、集合的な団粒(二次粒子)それぞれの直径が等しいと想定して基本粒子と団粒の配列を考え、それぞれの孔隙率を数値化すると、以下の4つになる〔参考:久馬 p. 21~。計算式は省略^^〕

1.基本粒子、団粒とも密充填・・・45.17%
2.基本粒子、団粒とも粗充填・・・72.58%
3.基本粒子は粗、団粒は密充填・・・61.23%
4.基本粒子は密、団粒は粗充填・・・61.23%

あくまでモデルの理論上の数値。
とはいえ、1.においてさえ、単粒構造の土壌との孔隙差は侮れない(1:1.75)。実際の団粒構造を為す土壌の孔隙率は、より「高次の団粒構造を作ることも考えられ」るので、「そのときの孔隙率は一層高くなる」と想定される。団粒構造の発達程度で孔隙率も異なってくるのである。



以下、重要なポイントと思われるので久馬を引用〔太字は楽趣味〕。

団粒構造の意味:団粒構造は土壌中の孔隙の割合を高くするだけでなく、孔隙の大きさに小さいものから大きいものまでの変異を作り出すのにも役立っている。一般に細かい砂粒や団粒が集合した時にできる孔隙は小さく、大きい粒子や団粒の間にできる孔隙は大きい。この孔隙の大きさの差異は、植物生育の培地としての土壌にとって非常に重要な意義を持っている。
植物の根は呼吸をしていてエネルギーを得、それによって水分や養分を積極的に吸い上げて生命を支えている。この呼吸のためには酸素が必要であるから、土壌中の孔隙は大気と通じていて常に酸素が補給されるようになっていなければならない。ところでこういう通気のための孔隙というのはかなり大きくて、大雨が降った後では余分な水をはかす役割をも果たしている。水がぬけるからこそ空気が入ってくるのである。したがって土壌中を通って水をはかせる透水の機能と、空気を補給する通気の機能とは同じことの表と裏である。この透水・通気の働きが十分でない土壌では、根が「湿害」を起こすといわれる。湿害というのは一種の酸素欠乏による呼吸困難の症状にほかならない。 --中略-- 土壌は一方で水をはかすと同時にもう一方で水を保持できないといけない。この透水・通気と保水という一見矛盾した機能を両方とも果たすのでなければ、良い土壌とは言えないのである。


《『きまぐれ羅雫は森の中』関連記事》
土の団粒構造って?
Series HUMUS 「土は生きている」 -1-
Series HUMUS 「粘土(鉱物)」 -2-
Series HUMUS「黒いもの、腐植」-3-

《参考文献》
土壌の基礎知識〔農林水産省〕
・久馬一剛『土とは何だろうか?』(京都大学学術出版会、2005)
・山根一郎『土と微生物と肥料のはたらき』(農文教出版、1988)


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